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山頭火とコーヒー (8)

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山頭火とコーヒー (8)
 
coffeecup

 山頭火が酒好きだった記述はたくさんあります。
「夜長ノート 1911(明治44)年12月( 「青年 明治四十四年十二月号」)29歳」に
 『いつまでもシムプルでありたい、ナイーブでありたい、少くとも、シムプルにナイーブに事物を味わいうるだけの心持を失いたくない。
酒を飲むときはただ酒のみを味わいたい、女を恋するときはただ女のみを愛したい。アルコールとか恋愛とかいうことを考えたくない。飲酒の社会に及ぼす害毒とか、色情の人生に於ける意義とかいうことを考えたくない。何事も忘れ、何物をも捨てて――酒というもの、女性というものをも考えずして、ただ味わいたい、ただ愛したい。』とあります。

 山頭火は大酒を飲み、警察に留置されたり、無銭飲食をして失敗談も沢山あり、アル中のようにも考えられますが、後年、酒量が下がったようです。1935(昭和10)53歳では、
 『 一月十一日 晴、あたゝかい。
近頃の食物の甘さ――甘つたるさはどうだ、酒でも味噌でも醤油でもみんな甘い、…
よい晩酌、二合では足りないが三合では余ります。』
 『 一月十二日
いつもより早く、六時のサイレンで起きる。物忘れ、それは老人の特権かも知れない、私も物忘れしてはひとりで微苦笑する。… 餅と酒とを買ふ、餅もうまいし酒もうまい。酔うた、酔うたよ、二合の酒に。……
夜はさびしい風が吹きだした、風がいかにさびしいものであるかは孤独生活者がよく知つてゐる』
とありますが、度を超した深酒が失敗のもとだったのでしょう。

一方で、山頭火は酒をある理由で、飲まなかったという記録があります。行乞記 1930年山頭火48歳、大分県湯布院町湯平温泉でのこと。のん兵衛、而してその実態はアルチューにあらず、だったようです。

 『 十一月十日 雨、晴、曇、行程三里、湯ノ平温泉、大分屋
夜が長い、そして年寄は眼が覚めやすい、暗いうちに起きる、そして『旅人芭蕉』を読む、井師の見識に感じ苦味生さんの温情に感じる、ありがたい本だ(これで三度読む、六年前、二年前、そして今日)。
冷たい雨が降つてゐるし、腹工合もよくないので、滞在休養して原稿でも書かうと思つてゐたら、だん々霽れて青空が見えて来た、十時過ぎて濡れた草鞋を穿く、すこし冷たい、山国らしくてよろしい、沿道のところどころを行乞して湯ノ平温泉といふこゝへ着いたのは四時、さつそく一浴一杯、ぶら々そこらあたりを歩いたことである。
「秋風の旅人になりきつてゐる」 』

(続く)
 
  • 2015.12.13 Sunday
  • 10:43