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山頭火とコーヒー (6)

JUGEMテーマ:コーヒー
山頭火とコーヒー (6)
 
coffeecup

 其中日記 1938年(昭和十三年) 56歳には、酒におぼれている自らへの悔恨が記されています。分かっちゃいるけどやめられないというところでしょうか。
 『 八月廿日 曇。
…  酒はやめられない、酒を飲むと脱線する(いつもさうではないが、そして脱線といつても大したことではないけれど)、ほんたうにうまい酒、最初から最後までうまい酒が飲みたい。
悔のない生活、かへりみてやましくない生活がしたい。
私は矛盾だらけだ、それはアルコールがもたらすものである。
或る日はおとなしすぎるほどおとなしく、或る夜はあきれるほどあばれる。
あゝ、かうして私は一生を終へるのか。
ほろ々酔ふたとき、私は天国を逍遙する。
しんじつ句作するとき、私は無何有境の法悦を味ふ。
あゝ、この矛盾! それを克服することが私にあつては生死の問題だ! 』

 そして、いよいよ追い込まれていく危うい心情が吐露されています。
 『 八月廿一日 曇、微雨。
身心沈静、専心読書。たよりさまざま、友はなつかしいかな。
自己粛清――自己転換――自殺――私もいよ々どんづまりまで来た。
まさしく秋、天も地も人も。』

 『 八月廿二日 曇――晴。
欝々として。―― 戦争の夢を見た、覚めてからも暫らくは身心が重苦しかつた。』

 『 八月廿三日 晴れたり曇つたり。
冷々淡々、それでよろしい。
朝はコーヒーだけ、昼は御飯、晩はまたコーヒー。憂欝にたへきれなくて散歩する、暮羊居に寄つて新聞を借りる。
万葉集を読みつゝ、その素純にうたれる。身辺整理。とても寝苦しかつた。』

 『 八月廿四日 晴、快晴。
けふもコーヒーだけ。清丸さんから重ねてたより、召集されて入営するといふ、餞けする物はないので、さつそく一句贈つた。
六日ぶりに街へ、まづW店で一杯また一杯(酒も六日ぶりだ)、そしてS店で半搗米を貸して貰ふ。
けつきよくは飯と水である。
今日はお盆の二十四日、地下はお地蔵さまのおせつたいで賑ふ、ほゝゑましい風景であつた。
午後、また、散歩がてらポストへ、暮羊居に立ち寄つて、久しぶりに会食した、よばれた々、うまかつた々!
夜、暮羊君来庵、杉の青葉で蚊遣して、わざと蝋燭で、コーヒーをおいしくすゝつた。今夜も寝苦しかつたが、やつと眠れた。』

 『 八月廿九日 曇。
夜の明けるのを待ちかねて、水を汲む、水が濁つてゐる、さびしい色だ、何となく心が重苦しい。午後、Nさん久しぶりに来庵、そこはかとなく話す、コーヒーを御馳走したいが砂糖がない、そこらまで送る、そして私は石油買ひに新町へ、M店で一杯、むろんマイナス也、老主人はいつも嫌な人間なるかな、ついでに米を貰うて戻る。』

(続く)

 
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  • 2015.11.29 Sunday
  • 08:28